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「ナベさんの気ままなラジコン日記」⑩~グライダーの勧め~

ラジコン飛行機というと、自立安定性の高い高翼機で入門して、それが飛ばせるようになると低翼のスポーツ機に移行し、そのうちF3Aのスタント機に行き着くというのがおおかたの道筋のようです。 私の場合も例外ではなく歳がバレますが、若い頃はブルーエンゼルやキュラーレというスタント機を飛ばしていました。
 当時はターンアラウンドルールなんて存在していませんでしたから、遠くの方から勢いをつけてきて「エイ!ヤー!」ってな具合でスピードに酔いしれていました。 しかし、騒音の問題で飛ばせる場所も無くなり、フライトエリアを点々としていた頃、グライダーと出会いました。

 あれは確かムサシノ模型のスカイウォークⅡだったと思います。 とても小さくて軽いグライダーなのですが、稲刈りの終わった田んぼで飛ばしている方とお会いしました。
 彼がひょいと手投げしたグライダーが2~3周した後、自らの手でハンドキャッチしてしまうんです!これはすごい! こんな手軽で静かなラジコン飛行機があったんだと驚きました。 周囲のギャラリーもとても好意的な笑顔で見つめています。 それでも1フライトが10数秒なのですが、何回か投げた後、やがてグライダーは沈下しなくなりました。 そのグライダーはトンビのように旋回を繰り返していると、徐々に上昇していったのです。 私を含めてギャラリーは騒然としました。それは何とも不思議な光景で、あたかもMrマリックのハンドパワーを見せ付けられた感じでした。

 それから私はグライダーにのめり込みました。早速、彼と同じスカイウォークⅡを作っては何度も飛ばしましたが、私のグライダーは何故か上昇してくれません。 そうなんです、そもそも私はサーマルが何であるかも、サーマルの捕らえ方も知らなかったのです。 それから、グライダーの本を読み漁り、グライダーを飛ばしている場所に出向いて、いろいろなことを教えてもらいました。 また、それだけでは満足出来なくて、実際にサーマルというものを自分の身体で体験してみようとパラグライダーを始めました。
そんな生活を続けていくうちに、少しずつではありますがサーマルソアリングらしきものを体得できるようになりました。

 グライダーを始めたけれどサーマルに乗せた事がない方。それはサーマルが発生していないのではなくて、サーマルに進入したことが判る感覚が身についていないだけのことです。 注意深くグライダーの姿勢を見ていると、自然とサーマルの感覚が養われてきます。
 誰もが知っているようにサーマルは熱上昇風です。太陽の熱で地表近くで暖められた空気が膨張し、周囲の大気との比重の差で上昇をはじめます。ということは、夏よりも冬のほうが一日の温度差が激しいので強くてはっきりとしたサーマルが発生します。 また、暖められやすい地表ということでは、川や湖の上空よりも砂地や乾燥した休耕田の方が発生しやすくなります。 時間帯で言いますと、太陽が出て地表が暖まってくる頃、午前10時頃から午後2時頃までにスポット的なサーマルが発生しやすくなります。 その後、午後3時から4時頃になると、強くはないのですが比較的穏やかで広範囲なサーマルが発生しやすくなります。これは、周囲の空気は冷え始めるのですが、地表に残った余熱で暖められたサーマルが全体的に上がりだすためです。このようなサーマルをアーベントテルミックと呼んでいます。

 サーマルを見つけたらセンタリングと言って、とんびのようにサーマルの中に留まるように旋回をします。 これはやみくもに回すのではなく、高度の沈下が少なくなるようなバンク角を決め、穏やかなエレベーター操作で回します。 日ごろから、右旋回も左旋回も両方ともスムーズに旋回できるように練習しておきましょう。
 サーマルを見つけると他のグライダーも同じサーマルに乗るために集まってきます。 この時、空中衝突を避けるために旋回の方向を決めるので、苦手な旋回方向がある人は困ってしまいます。 ひとつのサーマルの中でたくさんのグライダーが一緒にセンタリングをして上昇していく様子を「ガーグルを組む」といいます。 これは蚊柱のことで、たくさんの蚊蜻蛉が集まってブンブン旋回している様子を例えて出来た言葉です。
 サーマルも風に流されますから、夢中になってセンタリングを繰り返していると、当然グライダーも風下に流されます。 いい気になって回しているとグライダーが帰って来れなくなりますので、ある程度で見切りをつけて別のサーマルを探すことが必要になります。



青い空と白い雲の中をぽっかりと浮かぶグライダー。グライダーマニアにとっては至福の時です!


機首にモーターを積んだモーターグライダーですと、簡単に高度が取れます。
高高度のサーマルの方が強いので、比較的簡単にサーマルハンティングが可能です。


手元から投げ放たれたンドランチグライダー。こんな機体でも、条件さえ良ければ、はるか点になるまで上昇します。


スケールグライダーは見ているだけでも十分楽しめます。
長野県の霧が峰滑空場や千葉県の関宿滑空場では実機によるフライトが見れます。



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