「ナベさんの気ままなラジコン日記」(396)~墜落から得たこと~ (2017/06/16)
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大変お恥ずかしい話ですが、私がともて大切に飛ばしていたモーターグライダーを墜落させてしまいました。
機体名は伏せておきますが、この機体はバルサキットから製作したもので、わずか数10フライトで主翼がバンザイして墜落したのです。
ラジコン歴38年、それなりの経験と知識は蓄積してきたつもりで、製作の記録を雑誌やネット上にご紹介してきた身としては、墜落による経済的損失よりも自分が持っていた浅はかな自信と経験が目の前で崩れていき頭が混乱してしまいました。
周囲のラジコン仲間からは
「また、モーターグライダーなのに激しいアクロでもしたんじゃないの?」とか
「接着し忘れた部品とかないの?」とか
「接着剤ケチったんじゃないの?」とか
いろいろ言われました。
俺は知ったかぶりで自信過剰の成り上がり者だったのか・・・・。
この時は本当に意気消沈してしまいました。
がっ!
悔やんでいても仕方がありません。
墜落の原因を究明して対策を施し、2度とこのようなことを起こさないこと。
(いわゆるPDCAサイクルですね!)
それが自分自身のためであり、読者の皆様への貴重な情報源になるはずだ!
と、考えるようになりました。
なんというプラス思考!^^;
まずは墜落の状況から振り返ってみます。
〔飛行状況〕
はじめの数フライトは飛行に全く問題なく、モーターラン時の上昇力も良好でサーマルも良く捉えていました。
グライダーですからモーターをカットしてから、決して過激ではないあたり前のループやロールを試したのですが、この時もまったく問題のない飛行をしていました。
〔墜落時の飛行〕
この時も通常のモーターランによる上昇と、穏やかなサーマルハンティングを楽しんだ後、高度が10mを切ったので再度モーターをONにしてエレベーターを僅かにUPした瞬間、主翼が真ん中から折れました。
墜落したのはモーターをONにした直後でしたから時速にして20Km/hくらいでしょうか、機速はそれ程ついていません。
エレベーターのUPにしても上昇角20度程度でしょう。
まったくもって穏やかな操作です。
とすると・・・。
〔仮説〕
墜落時の操舵によって機体が破壊したのではなく、いままでのフライトの中で徐々に機体の破壊が進んでいったのではないかと考えられます。
ということは、実機でいうところの「金属疲労」ならぬ、ラジコン特有の「木材疲労」が原因だったのではという仮説が成り立ちます。
そうとなったら早速原因の究明です。
〔調査〕
過去にも金属疲労により空中分解を起こした英国航空のコメット、離陸時に滑走路に落ちていた他機の部品を踏んだタイヤの破片が燃料タンクに突き刺さり墜落したエールフランスのコンコルド、圧力隔壁の亀裂により墜落した日航ジャンボジェットなど、実機による過去の痛ましい墜落事故の原因究明の方法に習い、墜落した部品をかき集めてみました。
壊れたのは主翼の中央部分です。
主翼の破れたフィルムと壊れたプランク材をていねいにに剥がしていきます。
すると
〔壊れていない部材〕
○カーボンカンザシ
カーボン製ですから強靭です。ビクともしません。
○カーボンカンザシを通すアルミパイプの取付け部分
エポキシ系接着剤でベッタリと接着しておきましたので大丈夫でした。
○ヒノキのスパー
ヒノキ材は強度がありますから上下とも原型を保持していました。
〔壊れた部材〕
○上下のスパーを結合しているバルサ材
繊維方向は縦なのですが、バルサ材自体がボロボロに引き裂かれています。 なお、バルサとスパーの接着部分はきちんと接着されていました。 ○主翼結合部のリブ
主翼結合部のリブは2枚重なって接着されるので接着面積は広いのですが、2枚のリブが接着されたままの状態でプランク材をはじめ、スパー、前縁材、後縁材からもぎ取られていました。
○水平・垂直尾翼の直前の胴体部分
これは墜落直後に発生したと思われますが、墜落により地面に衝突し、機体速度が一瞬にして停止すると、慣性力により水平・垂直尾翼が前進を続けようとするため、水平・垂直尾翼の取付け部分の胴体前方が折れていました。
なお、この部分はラダー・エレベーターロッドを胴体の外に出すための穴が開いているため強度が低くなっています。
今回の墜落により破壊された部分はいろいろありますが、主翼がバンザイした直接の原因は主翼の上下を通るスパーを連結する部分のバルサ材の破壊が主な要因であるので、その部分の強度を検証します。
それでは上下スパーの連結部材をいろいろと変更して強度を比較してみます。
〔実験〕
スパー連結部材を①1.5mm厚航空ベニヤ、②1.5mm厚バルサ材の裏にマイクログラスを接着したもの、③1.5mm厚バルサ材の3種類用意して強度テストをします。
まずはスパー連結部材を切り出します。
大きさはキットに使用されているサイズに近づけます。
勿論、①、②、③とも大きさは同じです。
②の部材です。
バルサ材の裏に瞬間接着剤でマイクログラスを接着します。
2枚の内1枚は予備です。
上下のスパーに連結部材を接着していきます。
連結部材は写真奥から①航空ベニヤ、②バルサ材の裏にマイクログラスを接着したもの、③バルサ材のみの順です。
接着剤は同じ条件にするため、全て30分エポキシ系接着剤を使用しました
連結部材を接着したら、接着剤が硬化するまでの間、上から圧力を加えて一晩寝かせます。
接着剤が完全に硬化した頃を見計らって、いよいよ実験です。
はじめに航空ベニヤからです。
スパーを広げる方向に徐々に力を入れていきます・・・。
非常に強固です。
ビクともしません。
これ以上力を加えると主翼全体が壊れてしまうのではと思われるほど力を加えても何の変化もありません。
連結材の強度としては十分以上です。何も言うことはありません。
次にバルサ材の裏にマイクログラスを接着した連結部材です。
スパーを徐々に開いていきます。
途中、ミシッと音がしたのですが木材の破壊は始まりません。かなりの強度です。
どのくらいの力で破壊が始まるのか確認したくて、かなりの力を加えてみました。
スパーの曲がり具合や血流が止まって白くなった指先を見ても相当な力が加わっていることが読者の皆様にもお分かりかと思います。
さていよいよバルサ材のみの場合です。
少し力を加えたら・・・いとも簡単に裂けてしまいました。
破断面をよ~く観察してみます。
左側のバルサ材が薄くなっています。
これはスパーとバルサ材の表面は確かに接着されていたのですが、バルサ材の表層が剥がれたことを意味しています。
「それなら低粘度の瞬間接着剤を使えばいいじゃないか!」
というツッコミを頂くことも想定していましたが、条件を合わせるという意味であえて同じエポキシ系接着剤を使用しています。
そして右側の部分はバルサ材そのものが破壊していることが分かります。
スパーを広げる方向に力を加えてこのような破壊が起きるということは
『バルサ材は引っ張る方向の力よりも潰れる方向の力に対して強度が弱い』
ということがいえると考えられます。
〔結果〕
比較の結果、強度の強い順から
第1位 航空ベニヤ
第2位 バルサ材+マイクログラス
第3位 バルサ材のみ
と、予想どおりの結果となりました。
第1位の航空ベニヤと第2位のバルサ材+マイクログラスは模型飛行機としては十分な強度でした。
測定器が無かったので、あくまで感覚的な表現になるのですが
『第2位のバルサ材+マイクログラスと第3位のバルサ材のみでは強度に10倍以上の差を感じた』
ということが判りました。
そこで私の取った対策です。
〔対策〕
対策1
主翼中央部から左右3セル(リブとリブの間の空間の数です。リポ3セルとは関係ありません。)の補強材をバルサ材からベニヤ材に変更しました。
対策2
それ以外のバルサ補強材は、バルサ材の裏に瞬間接着剤でマイクログラスを接着しました。
対策3
主翼の接合部分はプランク材の上から瞬間接着剤でマイクログラスを帯状に接着しました。
(この対策は以前からしていました)
対策4
水平・垂直尾翼の直前の胴体部分はマイクログラスを巻いて瞬間接着剤で接着し補強しました。
(この対策も以前からしていました)
色が変わっているところが補強した部分です。もう少し広げても良かったかもしれません。
という訳で、私の新しいモーターグライダーはこの様な補強対策をして、今は元気に飛び回っています。
ちょっとした制作上の気配りで、僅か1ヶ月で機体が墜落するか、10年間飛び続けるか、機体の寿命が大きく変わります。
皆さんも組立て説明書を鵜呑みにするのではなく、先輩のアドバイスを受けたり、自身の判断で必要と思われる箇所は補強されると良いと思います。
それではまた来週! (^o^)/~~
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