「ナベさんの気ままなラジコン日記」(301)~調布飛行場事故に思う~(2015/08/14)
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恐ろしい事故が起きてしまった。
既にみなさんもご承知のことと思うが、7月26日の午前11時ごろ、乗員5人を乗せて調布飛行場を飛び立った軽飛行機が、こともあろうに住宅地に墜落してしまった。
この事故で、パイロットを含め軽飛行機に乗っていた2名が死亡、残りの3名が重症、また、民家の女性1名が死亡している。
調布飛行場は小型の軽飛行機が多く見られ、まるでラジコン飛行場をそのまま大きくしたような飛行場である。
ラジコン飛行機マニアなら大変興味深い飛行場なので、それだけに今回の事故は残念でならない。
これが調布飛行場の全容。
南北に伸びる800M滑走路が1本、南には味の素スタジアムがあり、周囲は住宅街が密集している。
昭和14年に帝国陸軍が用地を買収し、飛行場建設を始めた頃と環境の変化は比べ物にならない。
当時はメイン滑走路は1000mで横風滑走路もあったが、その後横風滑走路は使用されなくなり、メイン滑走路も800mに短縮された。
そしてこれが今回墜落した機体、パイパー社製PA-46 マリブ・ミラージュである。
小型の軽飛行機の中では割と高性能であるが、それなりに操縦技術を要する機体だと言われている。
で、こちらが今回操縦していたパイロット。
自らシップ・アビエーションという会社を設立、若手社長として手腕を振るっていた。
私は
「本来禁止されている遊覧飛行をしていた」とか
「同乗者からお金をもらっていた」とか
「資格も無いのにパイロット養成事業をしていた」
というような情報は山ほど出てきているが
肝心の墜落の事故原因を科学的に究明するような報道が、あまりにも少ないのことを不思議に感じている。
うがった言い方をすると、このような報道姿勢は、誰かを悪者に仕立てて、調布飛行場を危険な飛行場として印象付け、調布飛行場を廃止に追い込もうと、恣意的な情報操作とも受け取れてしまうのだが。
もちろん、今後調布飛行場はどうあるべきかという議論は必要だし、そのことについて否定する気はもうとう無い。
それは当然あるべき議論である。
ただ、私は墜落の原因を追究することは事故の再発防止に繋がる重要な問題であると思うのだが。
そこで、私は素人ながら墜落事故の原因について、自分なりに整理してみたいと思う。
1 墜落の直接的な原因は重量オーバーか
本機PA-46は、数日前に燃料を満タンにした後、数10分飛行した状態であったという。燃料はほぼ満タンの状態で、乗員は5名。他のPA-46のオーナーは「燃料満タンの場合は3名が限度」という。
乗員を減らすか余分な燃料を抜き取るという選択肢もあったのではと思う。
2 パイロットにとって、このフライトは不本意だったのでは
本パイロットは最初、このフライトを断ったという。パイロットはフライトの安全を第一に考える職業である。当然、本パイロットもこのフライトに安全の確証が得られず、一度はフライトを断ったのだろう。しかし、やむなくこの危険なフライトを承諾した背景には、彼はパイロットであると同時に経営者でもあったため、会社の利害関係や何らかの人間関係により断りにくい状況にあったのではないかと思われる。
3 大気の温度上昇によるパワーダウンを認識していた
パイロットであれば当たり前のことだが、気温が上がれば空気は膨張するため、空気の密度が下がる。そのためエンジンの出力が低下することは当然理解している。
離陸時刻は午前11時。太陽にに照らされた大地の影響により、気温は上昇し始める頃だ。
本パイロットは、他の機体よりも先に離陸をリクエストしたり、指定された場所でのランナップを省略した。そのことからも、本パイロットは1分でも1秒でも早く機体を離陸させたかったのではないかと思われる。
4 離陸滑走中のプロセス
私も最近知ったことだが、小型軽飛行機にはV1、Vr、V2のような運用手順がないそうだ。機体の総重量から失速速度を割り出して離陸速度を決定し、速度計を見ながら操縦桿を引くのだろう。
通常の軽飛行機であれば滑走路の半分程度で離陸していく。本パイロットも中間地点あたりで操縦桿を引いてみたが離陸する気配が無いので、800mの滑走路の終端まで使って離陸を試みた。
機体が離陸する気配が見られなかった原因は、機体の総重量が重過ぎたのか、エンジンの出力が期待値ほど得られなかったのか、あるいはその両方なのか、これは事故調査委員会の結論を待つしかない。
5 機長の決断
機体が滑走路の中央付近で離陸する気配が無かった場合、機長の選択肢は2つある。
1つは今回の事故の場合のように、滑走路を終端まで有効に使い、離陸速度を少しでも高めてから離陸する。
しかし、1つ目の選択肢は賭けである。何故なら滑走路の終端まで加速を続けたとても、離陸速度に達する保証は無いのである。今回の事故も離陸直後に失速を起こし墜落に至っている。
2つ目の選択肢は離陸をあきらめ直ちにスロットルを戻してフルブレーキを掛ける。
2つ目の選択肢であれば、例え機体が滑走路上で止まりきれないとしても、オーバーランして草むらに突っ込んだとしても、墜落に比べたらダメージは少ないはずである。
皮肉なことに、ラジコン飛行機の愛好家であれば、このようなことを何度となく体験しているのではないだろうか。
本機は離陸直後に左に傾き民家の中に墜落した。
素人の浅知恵と言われるかも知れないが、オーバーランしてもいいから前方の草地に突っ込んでくれた方が被害が少なかったのではないかと思ってしまう。
ギアアップの操作が遅れたため失速を誘発したのではないかという報道があった。
私は、副次的にはその可能性も無くはないが、直接的な原因とは考えられないと思う。
なぜなら、ギアの引き込みが遅れただけで失速するような機体は、もはや飛行機とはいえないからだ。
飛行機はちょっとした判断の誤りで多くの人の命を奪ってしまう。
墜落すると尾翼のダメージは少なく、原型を留めている所はラジコン飛行機の場合と似ている。
さて、これが私たちが毎日運転する自家用車の場合であればどうだろう。
エンジンの調子が悪ければ、車を路肩に止めJAFに電話すれば済む話だ。
あるいは到着先の先方に遅れる言い訳を考えればいいだけのことだ。
空を飛ぶということは、それだけ危険をはらんでいて、故に安全管理を厳格に遂行しなければならないということを改めて痛感した。
今回の事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
また、私のような素人の飛行機愛好家の稚拙な文章を最後までお読み頂いたことに感謝申し上げます。
ナベさん
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